キスより甘くささやいて
「美咲、どおしたの?」
颯太がトイレに立つと、シルビアママが私の顔を覗く。
やっぱり、気づかれたか。
シルビアママは私の顔を読んでいる。
「うーん。…これから喧嘩する予定なの。」と少し笑うと、
「颯太のどこが気に入らないの?」と首を傾げる。
「そんなところはありませんよ。
でも、そのまま別れる事になるかもしれないな。」と溜息をつくと、
「男と女の事は、他人にはわからないのかもしれないけど。
…少し距離を置くなら、ここに泊まりに来てもいいわよ。
ここなら、颯太も安心するだろうし。」と優しい言葉。
「ありがとうございます」と微笑むと、
「まあ、お礼はここで、タダ働きって事でいいわよ。」と笑う。
そういうことね。と私も笑い、
「私は雪だるまを着て働くことにする。」と言って、シルビアママは
「いつでも歓迎よ」と私の頭を撫でた。
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