キスより甘くささやいて
私はいつも通りの生活を続けた。
学校に通い、図書館で勉強し、実習に行った。
レポートを書いて提出し、また、書き直した。

颯太のコンクールの優勝はすごく嬉しかった。
オリジナルのケーキに私の名前がつけられているって知って、本当に嬉しい。
でも、颯太はこれからが忙しいはずだ。
フランスでも仕事があるだろう。
自分のお店も持ちたいだろう。
私は颯太が私を忘れないでいてくれたことで十分だ。

時折寂しくなると、
海沿いのホテルに泊まって、
いつものように海に降りる階段に座って、目を閉じる。
繰り返される波は颯太の記憶と私の耳元で囁く声を連れて来てくれる。

私は颯太を愛している。

颯太の中で、私が思い出に変わったとしても…

もう、2度と会えないとしても、


それはそれでかまわないのだ。
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