キスより甘くささやいて
やれやれ。
なんで、別れたオトコの名前を呼んじゃうかな。
しかっりしろ、美咲。
と思っていたら、
颯太がドアをバンッ!と開けてやって来る。

怒られる、
と、思わず首をすくめて目をギュっと閉じたけど、
そっと、頬に手をあてられた感触に目を開ける。
すると、
ものすごく近くに顔を寄せた颯太の瞳があった。
おっと、近いですよ。
と思う間もなく、私の唇を颯太の唇が塞いできた。
ゆっくりと角度を変え、唇を味うようにしてから、唇を離す。
耳元で、
「心配かけんな。」と囁いた。

「ちょっと、なにしてんの?」と、こわばった声で聞くと
「キスだろ。知らねーのか?」と颯太はちょっと笑った。
「なんでキスなんかするのよ!」
「うるせーな。つい、だよ。つい。
もうちょっと休んで待ってろ、送ってくから。」
と部屋を出て行く。
いや、ちょっと待て、
ちっとも、納得出来ないんだけど!

部屋に残った片岡さんが
「困った男だな。今の答えじゃ、だめだろ」とクスクス笑った。
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