キスより甘くささやいて
軽自動車の運転席に窮屈そうに座った颯太は、結構安全運転だ。
「来週の火曜日から、出勤ってことで。
8時30分に迎えに行く。用意して待ってろ。」
といつの間にかアルバイトする事になってる。
なんで?
それに、さっきのキスの説明もなし。
私が智也(トモヤ)の名前を呼んだことについてもなにもきいてこない。
もう、全部なかったことにしているの?
ラジオから流れる曲に合わせを機嫌良さそうに口笛を吹いている。

車を家の駐車場に入れ、
私を門の前まで送ると、肩を抱き寄せ、額にキスして、
「おやすみ」
とヒラヒラと手を振って住宅街の上に上がっていく。
颯太の家は確か、同じ住宅街の上にある。
私はキスされた額に手をあて、唖然として、
勝手にキスすんな!と心の中で叫ぶ。
…ここで大声を出したら、家族が見に来ちゃうし。
どーなってるんだ?あのオトコは。
ちっとも理解できない。

頭を振りながら、玄関のドアに手をかけると、
「美咲」と後ろから、弟の声がする。
なんで、今、帰ってくるかな?
「風間さんと付き合ってんの?」と嬉しそうに聞いてくるので、
「付き合ってません!」
と怒った声が出た。
どいつもこいつもキライだ。
少しは私に考える時間を与えてください。
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