Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 あれほどに純粋な心を、他にみのりは知らない。その純粋な心のすべてで、みのりのことを想ってくれていた。あんな男性は、みのりの人生の中で今までもいなかったし、これからもきっと現れないだろう。

 そして、みのりも無垢な少女のような心になって、ただただ遼太郎のことが好きだった。何の打算もなく、見返りも求めず。そこにいる遼太郎の存在が、愛しくてたまらなかった。
 これから、他の誰かを愛せないほどに……。


 でも、もう、遼太郎に抱きしめてはもらえない。
 優しく切ない声で、『好きです』とは囁いてもらえない。


 自分で決めた別れだったけれど、みのりの心は遼太郎を求めて、もがき苦しんだ。


 それから、どれだけの涙が流れ出たのだろう。それらは激しく流れるシャワーのお湯に溶けて、みのり自身にも分からなかった。


 みのりと遼太郎とのロマンスを聞き出したかった澄子は、せっかく二人きりになったにも関わらず、眠気には勝てなかったようだ。すでに安らかな寝息を立てていて、このみのりの苦しみには気づいてあげられなかった。

 みのりはこれまでもこれからも、ただ独りで、その体に不似合いなほどの大きな苦しみと悲しみを、抱えて生きていかなければならなかった――。


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