Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎が初めて独り暮らしをすることになるアパートは、大学から自転車で15分ほどの住宅街の中にあった。周りに同じようなアパートやマンションが並んでいる。新しくはないが、ボロでもない。オートロックの出入口などはなくとも、手入れの行き届いた小奇麗な単身者用のアパートだった。


「あんまり大学に近すぎたら、たまり場になるかもしれないしね。」


と言うのは、このアパートを探してくれた遼太郎の姉の真奈美だ。

 飛行機と電車を乗り継ぎ、真奈美と落ち合った遼太郎と母親は、不動産屋で本契約をした後、ようやくアパートへと到着した。


「私の大学はずいぶん郊外だけど、遼太郎の大学はホント都心の真ん中にあるから、羨ましいなぁ~」

「その分、家賃も高いでしょう?」

「うーん、だけど、この辺にしては家賃も手ごろだったのよ。」

「そう?お母さんとしては、もう少し安いところの方が助かったんだけど…」

「そりゃ、築五十年とかでもよかったらね。でも、やっぱり念願の大学生になったんだから、少しは快適でないと遼太郎も可哀想じゃん。」


 姉と母親のそんな会話を聞きながら、遼太郎は窓を開けて、やっと一人分の洗濯物が干せるくらいの小さなベランダへと出てみる。そして、そこからの眺望を確かめた。

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