Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 「結婚、結婚」と連呼する喜美代は、みのりが結婚をすれば本当に幸せになれると思っているのだろうか。それよりも、みのりに子どもを産ませて孫を持つことで、自分の人生が完成されるかとでも思っているように、みのりには感じられた。


 自分で相手を見つけて、胸を張って両親に紹介できたらいいのに…と、みのりは何度思ったことだろう。

 けれども、以前好きだったのは妻子持ちの男性で、今胸を焦がすのは年端もいかない元生徒だ。

 好きになってしまう前に、打算でもって男性を選別できるしたたかさが、みのりには欠如していた。結婚して、そこに自分の居場所と幸せを見つけようとしている一般的な女性は、初めからそんな男性を好きになったりしないだろう。


 こんなふうに結婚のことが持ち出されると、今のみのりの思考の中には、否が応でも遼太郎のことが立ち込めて、彼でいっぱいになってしまう。

 遼太郎と結婚なんてできないことは、初めから解っている。みのりだって、初めからそれを望んでなどいなかった。


 それでも、愛しく想うのは遼太郎だけだ。心の大部分は遼太郎が占めていて、他の男性がそこに入り込む余地などはない。

 何よりも、他の男性と結婚してその男性に抱かれる――遼太郎以外に触れられることなど、到底みのりには耐えられそうになかった。


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