Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜


 こうやってちゃんとしたライブハウスで、チケットを売ってライブが出来るほどの実力を兼ね備えているのだから、女の子たちが佐山に惹かれるのも当然だ。


 そうしている内に、薄暗かった会場は、照明が落とされ真っ暗になった。鳴り響いていた賑やかな音楽も止み、騒然としていた空気が一瞬鎮まる。これから始まる昂揚感が徐々に高まって、待ちきれずに「晋ちゃーん」と呼ぶ女の子の声が響き始めた。


 スポットライトでステージが照らし出され、バンドのメンバーたちが小さなステージに姿を現すと、「キャ――ッ!!」という歓声が沸いて出る。
 ドラムステッキの合図の音が鳴り、ギターを弾きながらマイクの前に立つ佐山の歌声が響いて、遼太郎は全身にゾクッと鳥肌が立つのが分かった。


 佐山はいつもと同じ眼鏡をかけ、特別なステージ用の衣装などではなく、普段と同じジーパンとTシャツ姿だが、レンズの向こう側の目つきが違っていた。
 いつもはちゃらんぽらんな感じさえする佐山だが、今日はまるで何かが憑依したようだ。そんな佐山の顔つきの変わりように、遼太郎は驚いて息を呑んだ。

 歌うのは、正統派のハードロック。佐山がギターをかき鳴らして演奏するサウンドは、とても男っぽく重厚感があり、男の遼太郎が聴いてもカッコいいと思う。ライブに来ているのが佐山目当ての女の子ばかりではなく、男性ファンが多いのも頷ける。


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