Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜






――分かった。という風に、遼太郎は頷いてから、


「これからも、お世話になります。」


と、再び深々と頭を下げた。

 思いもよらなかった遼太郎の言動だが、母親はそこに遼太郎の成長を見て取っていた。こうやって少しずつ知らないうちに大人になっていくことを、母親は嬉しいような寂しいような気持ちで受け止めた。


 頭を上げた遼太郎の目に、ダイニングのテーブルの上に置かれていた紙切れの鮮やかな色が飛び込んできた。
 何だろう?と思って、2枚あるそれを手に取って見てみる。するとそれは、吉田から一番近くにある遊園地のフリーパスだった。


「…母さん!これ、どうしたの?」


 チケットを手に取ったまま、母親に向けられる遼太郎の目は真剣そのものだった。


「ああ、それ?お母さんのお友達がくれたのよ。何でもその人もどこからか頂いたんだって。俊ちゃんが春休みに行くかしらって、思ってるんだけど。」


 俊ちゃんというのは、俊次といい、この4月から中学3年生になる遼太郎の弟だ。


「俊次じゃなくて、俺が行きたい。これ、俺に頂戴!!」


 渡りに船とはこのことだ。今日こそ遊園地へ行く話をしたばかりで、何という偶然だろう。
 遼太郎は興奮して、思わず胸が高鳴った。


 チケットを見つけるや否や態度が一変した遼太郎に、母親は少し気圧されて、目を瞬かせた。


「いいけど…。2枚とも?俊ちゃんと二人で行ったら?」


「なんで…!」


と言いかけて、遼太郎は絶句した。
 この歳になって、弟と二人で遊園地…なんて冗談じゃない。



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