Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 第2グラウンドに向かうと、気持ちが幾分落ち着くのが分かる。
ここでこうやってラグビーボールに触れていると、自分の中心に潜在している硬くて冷たいものさえ、いつの間にか意識しないですんでいた。




 夏休みに入ったというのに、少しも息つく暇のなかったのは、みのりだ。


〝恋の痛手を癒すのは、新しい恋ではなくて忙しい仕事〟


と言ったのは誰か知らないが、みのりに関してそれは的を射ていた。

 今年は初任者研修もなく、クラス担任に就いていないとはいえ、すでに個別指導をする生徒を何人も抱えていて、補習がない夏休みでも、ほぼ一日ひっきりなしに生徒がみのりのもとへと訪れた。

 学校にいるときは次々に仕事が押し寄せてきて、余計なことを考えずに済む。自宅のアパートに帰っても疲れ切っていて、何も考える余裕もないまま眠りに落ちてしまう。

 いつも「はぁ…」と、ため息をついてしまうような疲労感に支配されているけれども、決して嫌な疲れではない。自分を必要としてくれて、それに応えている心地よい充実感の中に身を置いて、みのりはそれに没頭していた。


 蓮見とお見合いをしてから、1か月に1度の頻度で、携帯電話に蓮見からの着信が示されていた。


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