Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
何と言って答えたらいいのか戸惑って、遼太郎は絶句する。するとその沈黙に、彩恵はますます焦りの度合いを強めた。
「…狩野くんとはあんまり話したこともないのに、いきなりこんなこと言われても困っちゃうよね?」
沈黙の中で、遼太郎の思考はせめぎ合っていた。
もちろん、好きなのはみのりだけだ。それは遼太郎にとって真理のようなもので、これからも変わることはない。
けれども、この状況をどうするべきか…。彩恵の好意をどう受け止めるべきか…。
あまりにも沈黙が長いので、彩恵はそれを否定的な意味に受け取ったらしい。
影の射した寂しそうな諦めの笑顔を作る。
「…迷惑だったみたいだね。ごめんなさい。…このことは忘れて、今まで通り友達として仲良くしてね。」
そう言って、彩恵はこの話をそれで終わりにしようとした。
「…いや、迷惑じゃないよ。」
突然口を利いた遼太郎を見上げて、彩恵は驚いたような顔をする。
「……え?」
「…うん、いいよ。付き合おう。」
遼太郎の短い答えに、彩恵の表情に歓喜が加わる。
「ホントに?!嬉しい…!ありがとう、狩野くん。」
喜びにほころんだ彩恵の顔を見ながら、遼太郎は決意して心に鎧をまとった。
――…これは、先生から出された宿題だ……!
そう自分に言い聞かせて、遼太郎は自分にとって辛く苦しい試練の中へと、敢えて一歩を踏み出した。