Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「迎えに来てくれて、ありがとう。下に降りて待ってようと思ってたんだけど。」
焦った雰囲気が漂うみのりの言葉に、遼太郎はいつものように、はにかんだ笑顔を見せた。
「車に乗ってきたんだよね?車はどこに停めた?下の駐車場?」
と言いながら、アパートの廊下を歩きだしたみのりの背中に、遼太郎が声をかける。
「先生。ドアのカギはかけないんですか?」
「…えっ…!?」
みのりは慌てて戻って、バッグから鍵を取り出してしっかりと施錠した。決まり悪そうにチラリと遼太郎を見上げるみのりを、遼太郎は笑いを含ませた顔で見下ろした。
「いつもはちゃんと鍵はかけてるから、心配しないで。」
遼太郎が取り越し苦労を口にする前に、みのりはそう言ってくぎを刺した。遼太郎も、口まで出かかっていた言葉を呑み込む。
みのりはそう言い繕ってみたが、帰宅したときに鍵がかかっていなくて、〝施錠せずに出勤してしまったことに気が付く〟といったことが、これまでに何度かあったことは黙っておいた。
この前の城跡での遼太郎を思い出すにつけても、そんなことを言おうものなら、きっとまた叱られるに違いない。
駐車場の空きスペースには、大きなワゴン車が停まっていた。遼太郎は甲斐甲斐しく助手席側に回って、そのドアを開けてみのりを促した。