Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 石原を傷つけてしまった罪悪感が、みのりを覆い尽くす。どう言って詫びて、どうやって償えばいいのか分からない…。

 あの時は、ああやって別れることが最良だと思っていたのに、何が正しいことなのか判らなくなってしまった。


――初めから、恋に正しいことなんてないのかもしれない……。


 いくら純粋に想い合っていても、他の誰かを傷つけてしまうのならば、〝正しい〟なんて言えないのかもしれない。

 恋する相手の気持ちの全てを理解しているわけではないから、自分にとっては正しくても、相手にとってはそうではないこともある。
 それぞれ正しいと思うことの方向が違えば、その〝正しさ〟は真理ではない。


 さっき、みのりが心の中で必死に呼んだ遼太郎……。

 遼太郎にとっても、みのりが正しいと思って決めた別れは、理不尽なことだったかもしれない。
 今となっては、遼太郎の心を聞き出す術もないけれど、まだ恋をするのに未熟で純粋な遼太郎をどれだけ傷つけたか……。

 それを思うと、みのりはいたたまれなくなって、ますます涙が溢れてくる。



 静けさの中に、放課後の学校の息吹が響いてくる。

 小会議室の前を小走りで通り抜けていく生徒たちの足音。
 遠くから聞こえてくる部活に勤しむ生徒たちの声。
 事務室から鳴り響いてくる電話の音。


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