Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 …ま、見た目がマズくても気立てが良ければ…と、気を取り直すこともできるが、「どうせ私なんか…」が口癖の彼女は、性格も卑屈でねじ曲がっている。その卑屈さが表情にも表れて、目つきも悪く、男子学生はおろか女子学生からも敬遠されていた。


「おはよう。席取っててくれて、助かったよ」


 その時、渦中の遼太郎が、少し息を上げながら何食わぬ顔で、佐山の横に滑り込むように座る。


「…りょ、遼太郎!ちょ、ちょ、ちょっと。確かめたいことがある!!」


 朝の挨拶も忘れて、佐山は血相を変えて遼太郎を問いただそうとしたのだが、時をおかず英語の教官が教壇に現れた。


「…何?」


 遼太郎は眉をひそめながら、佐山に囁きかける。


「込み入った話だから、後からだ」


 しかし、佐山はそう返し、その場でその話はそれきりになった。



 樫原が佐山に報告した〝亀山道子〟のことは、本当のことだった。
 付き合うようになったのは、ほんの昨日のこと。それを彼女本人が吹聴しているとは、遼太郎は夢にも思わなかったが。

 もともと女の子とはあまり関わりを持たない遼太郎にとって、道子はとりあえず顔を知っているだけのゼミの先輩だった。もちろん、言葉を交わしたこともない。

 そんな状況なのは佐山も樫原も当然知っていたわけだから、〝付き合う〟という現実は到底信じられなかったわけだ。


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