Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「ああ!もう!!……さっき、小耳に挟んだんだけどね」


と、結局は根負けして、樫原はその話をヒソヒソと佐山に話し始める。


「あのね、狩野くんなんだけど」


「うん、遼太郎が?」


「………同じゼミの、亀山道子。彼女と付き合ってるんだって…!!」


 樫原の言ってることがイマイチ理解しがたくて、佐山は眼鏡の向こうの涼しげな眼を数回瞬かせた。
 いや、樫原の言っていることは極めて単純明快なのだが、佐山が理解できなかったのは、遼太郎が新しい彼女を作ったその思考だ。……しかも……。


「亀山道子だって…?そりゃないよ。何かの間違いなんじゃないか?」


 佐山は失笑して、また樫原の早とちりだと思い込もうとした。


「間違いなんかじゃないよ。さっきゼミ室で彼女本人が言ってたから」


 樫原の真剣な口調に、とうとう佐山はそれを信じざるを得なくなる。


「茂森さんの次がアレかよ?……ギャップありすぎだろ……。」


 佐山がそれを信じたくない理由は、遼太郎の相手が、その亀山道子という女だからだ。



 2年生の春から遼太郎と佐山と樫原はそろって、「環境社会学」が専門の久留島教官のゼミに入った。

 亀山道子というのは、その久留島ゼミの3年生なのだが…。
 「美人」とまでいかないにしても、「可愛いらしい」など、誰がどう見ても肯定的な形容をし難い容姿。小柄な体には、余分な肉も付いている。


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