Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「相手があの人だとか、ブスだとかそういう問題じゃなくて、狩野くんには私たちに出会う前から好きな人がいるんじゃないかな?…忘れられない人が…。」

「…へえ?案外ちゃんと遼太郎のこと理解してたんだな。」


 佐山は彩恵に対する意外さを、隠すことなく口に出した。


 彩恵の指摘は、佐山自身も何となく感じ取っていたことだった。
 遼太郎から時々醸される何とも言い難い〝影〟のようなもの、その影の中に見え隠れする〝忘れられない人〟の存在。

 それをきちんと認識しているところを見ると、彩恵は彩恵なりに遼太郎を理解しようとしていたらしい。
 それに、遼太郎とその後の彼氏…、二人と付き合った経験は、彩恵の思考に良質な変化をもたらしたみたいだ。


「だてに何カ月も一緒にいたわけじゃないから。『彼女』にならなければ解らないことも沢山あるのよ。」


 彩恵はそう言うと、佐山の知らない遼太郎と自分だけの世界を垣間見せた。


 彩恵の後姿を見送って、佐山は彼女が発した言葉の意味を考える。

 彼女にならなければ解らないこと…。
 それは逆に、彼氏にならなければ解らないこともあるはずだ。遼太郎はまさに、道子のそれを理解しようとしているのかもしれない。


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