Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 その人が心にいる限り、自分に限らず他のどんなに綺麗な女性だって、遼太郎に触れてもらえることはないだろう。


 しかし、苦悩を漂わせる表情を隠せないあたり…、遼太郎はとても辛い恋をしているようだ。


 遼太郎は自分の苦悩は払しょくして面持ちを変えると、気を取り直すように道子に向き直って、その目を正面から見据えた。


「偉そうに言わせてもらうと、やっぱり先輩は間違ってます。愛し合っていない相手とそんなことをして、救われるはずがありません。そう思うのは、ただの幻想です。そんな気分になっているだけです。…俺はまだ、先輩の言ったように、それを体験したことはないけど…、先輩も本当に好きになった人と触れあえたら、俺の言ってることが解ると思います。…だから、その時に後悔しないためにも、先輩のその体は、心から好きになってくれる人のために、大事にしなきゃいけません。」


 誠心誠意を込めて、遼太郎は言葉を尽くして道子を説得しようとした。

 遼太郎の声色、眼差しの強さ。ここまで真剣に向き合ってくれた男性が、これまでの道子にいただろうか…。

 けれども、こんなふうに語ってくれる遼太郎も、自分のことを〝心から好きになってくれる人〟ではないことは、道子も分かっている。



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