Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
しかし、俊次は遼太郎とは違う、別の個性を持った一人の人間だ。
それに、実際に教室にいて友達とじゃれ合ってたりする俊次を見ていると、そんな心を切なくさせる感傷などどこかに行ってしまう。
初めて対面するわけでもなく、個人的な繋がりがないわけでもないのに、俊次はいつも澄ましていて目を合わそうとはしない。
みのりの方から声をかけようとしても、顔を赤くして、ぎこちなく逃げて行ってしまうものだから、みのりは可笑しくてしょうがない。
俊次の気の済むようにと思って、俊次の態度をそのままにしておいたがのだが…。
もうすぐ県体が始まろうかという5月の終わり、終礼の直後の教室で、みのりは俊次を呼び止めた。
これから部活に行こうとしていた俊次は、みのりから声をかけられても、それを振り切って階段を駆け下りて行こうとする。
「こら!俊次くん、待ちなさい!!」
この日、みのりは何としても、俊次と話をしなければならない退っ引きならない事情があった。
「…ちょっと、誰か。俊次くん…狩野くんを捕まえて!!」
俊次を追いかけながら、みのりが叫ぶと、それを聞きつけた女子たちが、数人がかりで俊次を捕まえて、踊り場の壁際に追い詰めた。