Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 遼太郎が必死に苦しさに耐えているなんて知る由もない俊次は、無邪気そのもの。追い打ちをかけるように、こんなことまで言ってくるので、思わず遼太郎は殴ってやりたくなる。


 みのりは、どんな気持ちでこの家に足を踏み入れたのだろう……。


――…もしかして先生はもう、俺のことなんて、何にも感じなくなってるかもな……。


 会えなくなって2年半が経とうとしている。それは、みのりにとって自分が〝過去の人〟になるのに、十分すぎる時間だと思った。
 そんな想像をすると、あまりの切なさに体が震えてくる。


「そうそう、仲松先生ね。俊ちゃんの個別指導もしてくれてるのよ。」


 さらに、台所にいて俊次の会話を聞いていた母親がそう付け足してくれるものだから、遼太郎の切なさにいっそう拍車がかかる。


「…俊次の成績があまりにも悲惨だから、先生も見るに見かねたんだろ。」


 感情を押し隠し強がるために、つい嫌味のようなことが遼太郎の口を衝いて出てきた。


「…えっ?!…なっ!なんだと!!」


 痛いところを指摘されて、俊次は憤慨したが、遼太郎の言葉に母親は面白そうに笑った。


「そうそう、遼太郎の言う通りよ。…でも、先生のおかげで、俊ちゃんも最近はちゃんと課題もやってるのよね。」

「課題をやるのは、当たり前のことだろ。」


 遼太郎の呆れたような物言いに、母親は優しい笑顔を向けてくれた。


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