Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



 街の明かりがぼやけて、視界が歪んで瞬きをすると、涙がまつ毛の先からほとばしった。手の甲で拭ってみても、涙はとどまるどころではなく、あとからあとから溢れて出てくる。


 みのりはたまらず、広い歩道の真ん中で立ち止まった。込み上げる想いと相まって、喉の奥から嗚咽が込み上げてくる。
 慰めてくれる人なんて誰もいないのに、みのりは子どものように声を上げて泣いた。


 こんなに泣くなんて、自分はなにを期待していたのだろう。
 初めから分かっていたはずだった。この想いが、幸せな未来など運んで来てくれるはずがないことを。離れ離れになってしまえばすぐに、自分は遼太郎にとって必要のない存在になってしまうことを。


 分かっていたはずなのに、この想いがやっぱり叶わないと覚って、みのりは涙が止められなかった。心の中で支えのように存在していたものが砕け散って、自分がどうなってしまうのか分からなかった。


 道を行き交う人々の、一人の肩が、みのりの肩とぶつかった。みのりがよろけても、その人物は何事もなかったかのように通り過ぎていく。
 みのりは涙をぬぐいながら、周りを見回した。みのりへとチラリと視線を向けてくる人が何人かいたが、仕事帰りの人々のほとんどは、泣いて立ちすくんでいるみのりを気にすることなどない。


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