Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「いつから、俺と先生に気づいてた?」
「狩野さんたちが駅に入って来た時から……。」
それでは、泣き出したみのりを慰めるために抱きしめたところも、別れ際にみのりの腕を掴んで引き止めたところも、全部見られてしまっていたということだ。
昨夜は陽菜の前で、なんの特別なものもないただの〝恩師と元生徒〟として振る舞っていたのに、今日そんなところを見せられたら……。
遼太郎は周りを見回して、落ち着いて話ができる場所を探した。やはり陽菜には、ゆっくり慎重に説明をしておかなければならないと思った。
「……日本史に詳しい狩野さんの元彼女……って、先生のことだったんですね?」
そのとき、陽菜からいきなり核心的な問いが発せられる。遼太郎は再び陽菜へと視線を合わせたが、とっさにはその問いに答えられなかった。
「清正の井戸のことも、神宮の森のことも、狩野さんに教えてくれたのは、先生だったんですね?」
強い視線で遼太郎の目を捉えて、陽菜が確かめる。利発な陽菜ならば、もうすでにすべてを覚っていて当然だった。
〝ゆっくり慎重に〟と思っていたものの、遼太郎自身もみのりと同じように動揺していたのだろう。反射的に、事実を表す直感的な言葉しか出てこなかった。
「先生は、『元』じゃないよ。今も、この命よりも大事な俺の恋人だ。」
遼太郎を見つめる陽菜の表情に、絶望の影が浮かんだ。