Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜



「……先生、すみません。俺、バイトでゴミの仕事したし、汗もかいてるんで、先にシャワー浴びていいですか?」


 みのりの質問に答えることもなく、遼太郎が会話を遮った。


「ああ、うん。……ごめん。私、気がつかなくて。」


 いつもの遼太郎なら、こんな時には微笑みを返してくれるのに、目も合わさないまま浴室へと籠ってしまった。


 居間に一人にされたみのりには、言いようのない切なさが込み上げてくる。会いたくて会いたくて、やっと遼太郎に会えたのに、言葉は思いのままに出てきてくれなくて、心は思ったように満たされなくて……、自分が変な期待をしすぎていたことを思い知らされる。

 みのりは窓辺にたたずんで、気を紛らわせるように夜の景色に目を馳せた。唇を噛んでも切なさは消えてくれず、みのりはただ遼太郎が出てきてくれるのを待ち続けた。




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