Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜

27 〝彼氏〟と〝彼女〟




 朝になって、みのりの容態は安定していたものの、もうしばらくは様子を見るために入院することになり、遼太郎は一旦帰宅することにした。
 まだ薬で眠っているみのりの顔色を確認して、静かに病室を出る。

 来るときには、救急車の中で「早く、早く」と気が急いて、とても遠く感じていたけれども、みのりの運ばれた病院は案外近いところで、遼太郎は歩いてアパートまで帰ることにした。

 秋の朝の爽やかな空気が流れていっても、遼太郎の心はこの青空のように晴れ渡ってくれなかった。みのりに愛を語り、みのりもそれを受け止めてくれたというのに、胸の底に鉛の塊のようなものがあって消えてくれない。


 重い足取りでアパートの階段を上がり、自分の部屋のドアの鍵を開ける。この鍵のことだって、みのりが指示してくれた。もし、みのりが気を失っていたら、この鍵だってかけて出ていたか分からない。それ以前に、救急車だってちゃんと呼べたか分からない。

 ドアを開けて、薄暗い部屋に入ると……、そこには大きな血だまり。その周りには、血に染まったタオルが散乱していた……。

 これは、昨晩みのりが流した血。
 その惨状を改めて目の当たりにして、遼太郎はその場に、力なく跪いた。体の震えを膝に両手をついて堪えても、涙はどうしても堪えきれず、粒になって零れて落ちた。


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