Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜
「どこにも行きません。今日はずっと、先生の側にいます」
「うん……。」
慰めるように優しく遼太郎が語りかけると、みのりは少し安心できたようで、小さく一つ頷いた。
こんなみのりは、遼太郎も初めて知るみのりだった。
自立した大人の女性(ひと)で、いつも前を歩いて遼太郎を導いてくれるような存在。
そんなみのりがこんなふうになるのは、それほど陽菜に刺されたショックやその痛みのダメージが大きかったのかもしれない……。
今はただ、こんなみのりの心が安らかになるよう、守ってあげたかった。十二歳の歳の差なんて関係なく、小さな子どものように頼ってくるみのりが、愛しくてたまらなかった。
「それじゃ、先生。今日は近くに食べに出ましょう。それまで、少し勉強していいですか?俺、次の発表が当たってる演習があって、準備しなくちゃいけないんで。」
「うん、分かった。……じゃ、私。コーヒー淹れてあげるね。」
みのりは涙で潤んだ瞳のまま、気を取り直すように微笑んだ。
「先生が?大丈夫ですか?」
「大丈夫。私、ドンくさいけど、コーヒー淹れるのだけは上手いのよ?」
「いや、そういう意味じゃなくて、片手で大丈夫ですか?」
と言う遼太郎の言葉は聞こえなかったのか、みのりは既にヤカンに水を入れて、火にかけている。
そんなみのりの様子を見て、遼太郎はホッと息を抜いた。それから、勉強机ではなくローテーブルにパソコンを据えて、勉強する準備をする。