ぼくのことだけ見てなよ
最近、席替えがあったんだけど、なぜかクラスの子に〝席変わってほしいな〟なんて言われて、変わった席が美島のとなりで。

これまたなぜか、わたしの前の席に那津。那津のとなりには松井が座ってて。

もしかしたら美島のアレが原因で、松井も怖い存在に入ってしまったのかも…なんて、思ったり。

そして、そんな美島くんが、わたしに対してすっごい甘いというか、優しいというか…。とにかく、いつも微笑んでわたしを見てくるようになって…。

「こら!そこの4人!特に美島!お前横ばっかり見て、ちゃんと授業受けんか!」

こんな風に怒られるのも、しばしば…。でも美島はヘコむわけでもなく、先生に反論する。

「だって、椿姫がカワイイから仕方ないよ先生」
「美島…お前なぁ…」
「先生だって結婚してるから、わかるでしょ?好きな子に対する気持ち」
「……それとこれとは、チガウだろ」
「わかってないなぁ、先生。ぼくは今、椿姫を落とすことしか考えてないの。だから邪魔しないでよね」
「はぁ……。及川」
「えっ、あ、はい」

こうやって、先生たちは美島に負ける。大抵の先生は同じくため息を吐いて、授業を再開させるんだけど、この先生はチガってわたしに声をかけてきた。

「美島の溺愛ぶりは、すごいな。他の先生から聞いてはいたけど、ここまでとは…」
「あ、はは…」
「まぁ、及川は必死に勉強しないと美島みたく学年トップの成績じゃないからな?大変だとは思うけど、頑張れよ?」
「………(余計なお世話だっつーの)」
「それと」
「はい…?(まだ、なにか?)」
「そろそろ落ちてやんないと、美島がかわいそうだからな?落ちたフリでもしてやれ。そのうち好きになるよ」
「せ、先生……」

落ちたフリって…。んなの、できるか!!しかもそれ、美島本人の前で普通言うっ!?

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