ぼくのことだけ見てなよ
うん、って…。そんな冗談とか言われても、受け止められないってば!

「ごめんごめん!マジメに答えるから」
「もう!最初からマジメに答えてよ…」
「はいはい。まぁ、楓のことだから、カンタンだろ」
「え、カンタン…?」

なに、どうカンタンなの?わたしはドキドキしながら、松井の言葉を待った。

「あぁ。椿姫ちゃんから、可愛く〝楓、して?〟って言えばアイツすぐ、すんだろ」
「……ねぇ、マジメに答えてって言ったよね?」
「だから、マジメに答えてんだろ」
「いや、どう考えても、ふざけてるでしょ!」
「わかってねぇなぁ。楓は、そういうの好きなんだって!」
「……だとしても、ヤダよ!もう、松井に相談したのが間違いだった」
「なんだよー。ゼッタイ、いいと思うんだけどなぁ」

なにが、いいと思ったよ!わたしが〝楓、して?〟なんて、言えるか!!ホント、松井に相談したわたしがバカだった…。

そんな松井は放っておいて、わたしは1人教室に戻ることにした。



「どこ行ってたの」
「えっ、あー、うん、ちょっと…」
「ちょっと?」
「う、うん」

教室に戻るとすぐに美島に声をかけられ、突然だったから言葉がたどたどしくなってしまった。そんなわたしを見て、美島の顔が歪んだ。

「椿姫?」
「あ、はい」
「誰といたの?」
「えっ、誰ともいないよ…わたし、1人だったもん」
「ホントに?」
「…うん、ホントに」

あー、もう無理っ!わたしって、どうして上手にウソがつけないんだろ…。

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