あまりにも猟奇的な少女たち
いくつかの話に盛り上がった頃、
令子の口から、
泡が吹き出してきた。
青くなった彼女が
発した言葉に
なぜか殺意が萎えていくのを
感じてしまった。

「ねえ、止めようか?」
令子の言葉は 断末魔なのか、
救いの手なのか、、、、
わからないまま薄れていく意識の中、
彼女の伸ばす手が黎子の首にまとわりついた。

「いっしょは嫌だよ。。。」
そう云った黎子の胸に鎮痛が走った。
令子の鋼鐵の付爪が
胸に刺さった。
払いのけた令子の親指から、
付爪がはがれていた。
深く刻まれた紅く染まった刃は
黎子の身体の一部に同化しようとした。

どのくらい時が過ぎたのか
黎子は まだ死ねなかった
その姿態を恨めしく思っていた。

紅く染まるシーツと、
まだ、その色を変えないままの
電球の割れたスタンドを
チェックアウトのあとの
調書取材の類の煩雑を
妄想させ居たたまれなかった。

「めんどくさいなぁ」
煩雑事務の回避に思いが及ばない黎子は
ただ 窓の外の
駅に向う群れを
眺め 立ち尽くしていた。
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