あの日のきみを今も憶えている
私たちの目の前には今、びっしりと予定の書かれたレポート用紙が置かれていた。
8月30、31日での、サマーキャンプの計画表である。


「ドキドキ★サマーキャンプって、なあ……」

「支度にあと一日しかないんだけど」


レポート用紙を覗き込んだ男の子二人が、呆れた口調で言う。


「ちょっと、文句言わないでよ! このあたしが、行きたいって言ってるんだから!」


定位置と化した、食堂の端っこ。
私の体を支配した美月ちゃんが元気よく二人に声をあげた。


「キャンプ場はここから近いし、さっきコテージの予約もとった! これだと、支度なんてたいしたことないよね」

「ええっと、何か、はりきってるね、美月ちゃん」


穂積くんが驚いたように言うと、美月ちゃんは深く頷く。


「もちろん! だって、行きたいんだもん。あーくんは、文句ある?」


ふん、と胸を逸らして言う美月ちゃんに、誰がノーと言うだろうか。
男の子二人は彼女の勢いに押されて、「かしこまりました」と答えた。


「お気に召すままに、美月姫さま」

「あ。なんだか穂積くんから、そこはかとない見下し臭を感じる」

「まさかまさか。本当に、楽しみだよ」


クスクスと笑った穂積くんが、予定表を摘み上げる。


「だって、夏の総仕上げって感じだ。ねえ、杏里」

「ああ。こういうの、嫌いって訳じゃない」


結局、二人とも好きなんだ。
最終的には、二人で予定表にガリガリ書き込みを入れて、ああでもないこうでもないと言い合いになった。

私は勝手に持っていく物を指定され、どころか意見一つ言う間もなく集合時間まで決められた。
おい、張り切りすぎだろ。

男の子たちは美月ちゃんが私の体から強制排除され、眠りに落ちた後も話し合いを(勝手に)続け、とにかく明日の30日からキャンプに行くことになったのだった。


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