あの日のきみを今も憶えている
『あーくんには、あたしがこの世からいなくなることをギリギリまで知らせないでほしい』


昨日の夜、美月ちゃんはそう言った。


『あーくんに引き留められたら、あたしは逝けない』


部屋の中に、月明かりが差し込む。
その光の中で、影を生み出さない美月ちゃんは寂しく笑った。


『いつまでも、逝けない。
だから、さよならって言って、終わりにしたいんだ』

『ミィ……』

『誰にも言えない、最後のお願いだよ、ヒィ。
明日からの残りの三日間を、あたしにちょうだい。
なんてことない、でも最高に幸せな日を、あたしにちょうだい。
我儘だと思う。だけど、最後だと思って、きいて』


ああ、美月ちゃん。
私は、そのお願いをきくよ。


『三日間、あたしは精いっぱいできることして、満足していなくなることができたらなって思う。
あーくんのことが大好きで、ヒィや穂積くんも大好きで、そんな人たちと笑って過ごす。
そんな三日を、あたしに下さい』


きくよ、きく。
あなたの願いを、私は。

それが、誰もが間違いだと言ったとしても。
それが、好きな人を悲しませるかもしれない嘘であったとしても。

だって、これ以上辛い思いをさせたくない。
私は美月ちゃんが、美月ちゃんの笑顔が本当に、好きなんだ。

その花のような笑顔がいつまでも咲いていて欲しいと思うくらいなんだよ。

だから私は、嘘をつく。


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