あの日のきみを今も憶えている
「うーん、そうかなあ。本気で話せば、あーくんは絶対分かってくれると思うけどな」


ふむう、と腕を組んだ美月ちゃんが、少しだけ考える。
それから、ぱっと顔を明るくした。


「あ! こういうの、どうかな。あーくんに、何か質問してもらうの。
あたししか答えられないような質問。そしたら、分かってもらえないかな」

「ああ、それはアリだね。名案かも」


コクコクと頷いた。
それなら、園田くんも信じようって気になるかも。


「ヒィの知らないようなことを訊いてもらうの。そして、あたしが答える。これでいこう」


美月ちゃんは、私の事を『ヒィ』と呼ぶようになった。

『ヒィ』というのは、私の家の中での呼ばれ方。
姉の千鶴が『チィ』、陽鶴の私が『ヒィ』というわけだ。
家族がしょっちゅう『ヒィ』と呼ぶものだから、美月ちゃんにもすっかり移ってしまったのらしい。


「そうだね。明日はそれで行ってみよう」


信じてもらえないだろうから園田くんに話さない、なんて選択は無い。
私はどうやってでも、園田くんに彼女の存在を知ってもらわなくてはならない。


「嬉しい。久しぶりに、あーくんに会える」


胸元で両手を組んでにこにこと笑う美月ちゃんを見ていると、尚更そう思う。
園田くんと意思の疎通がはかれたら、彼女はきっともっと笑うんだろう。

そして、園田くんも。


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