桜の花びらの記憶
 
 次の電車が目の前で止まり、乗らなきゃ……頭でそう思っていても、あの満員電車に戻る勇気が出ない。

 今、電車から降りてきた学生服の男の子が、なぜかこっちに向かって歩いてくる。

「由梨?」

 聞き覚えのある声に顔をあげると、家が近所で幼馴染のお兄ちゃんだった。

「あ、お兄……こ、こんにちは」

 お兄ちゃんとまともに顔を合わせたのは久しぶりだった。



 風が吹く。

 桜が散る。



 桜の花びらと共に思い出がよみがえる。

 小学生の時はいつも一緒にいた。
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