桜の花びらの記憶
 本当の兄妹のように、いつもお互いどちらかの家にいた。

 年齢も二つ違いだったので、一緒に遊ぶにはちょうどいい関係だった。

 庭で一緒にプールにも入ったし、シャボン玉もした。夏休みの宿題をこっそりやってもらって、お母さんにばれて二人で怒られた。

 お兄ちゃんの友達がたくさん来た時も、「妹だ」とか紹介されて一緒にゲームもした。



 ある日、お兄ちゃんは夢中でバスケの試合を見ていた。

 ルールがわからない私は何度もお兄ちゃんを引っ張って外に行こうと誘ったが、お兄ちゃんは頑としてテレビの前から動かなかった。



 桜の花びらが舞い散るある年の四月。お兄ちゃんはバスケのスポーツ少年団に入った。

 いつお兄ちゃんの家に行ってもいないという日が続いた。

 今日は練習、今日は試合。たまに家にいると思ったら、くたくたな顔して眠っていた。
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