溺愛ドクターは恋情を止められない
「都」
私が着替えていると那美が入ってきて、心配そうに顔を覗き込む。
「なにもなかった?」
「うん。ごめん、急ぐから行くね」
なにも用なんてなかった。
だけど、今日は病院から出たい。
走って駅に向かう。
逃げるなんてずるいかもしれない。
だけど、小谷先生と付き合っていないのだから、あのナースに言うこともない。
駅の手前でスマホが震え、確認すると、小谷先生からのラインだった。
【本当にごめん】
あのナースが怒って私のところにやって来たのは、本当に別れたという証だろう。
小谷先生が必死に変わろうとしていることはわかった。
だけど、それとは別の理由で彼の手は取れないから……。
ラインで断りを入れようか迷った。
だけど、それでは失礼な気がして、“既読”のマークを付けたまま閉じた。