溺愛ドクターは恋情を止められない
モヤモヤした気分だったけれど、彼に誘われたことがうれしくて、うなずいてしまった。
どこに行くのかと思いきや、ファーストフードのドライブスルーでハンバーガーを買い、再び車を走らせる。
「あの、どこに?」
「秘密の場所。松浦に特別教えてやる」
それきり彼はなにも言わない。
彼は海浜公園の駐車場に車を停めると、私を促して歩き始めた。
「間に合うかな」
「なにがですか?」
まるで少年のように目を輝かせた彼は、問いかけに微笑むだけで、答えをくれない。
そして、「急ぐぞ」と私の手を不意に握った。
どうしよう。
こんなことをされると、心臓が破れてしまいそう。
心臓の高鳴りがバレてしまわないか心配しながら、彼に続くと……。
「あっ……」
やがて海を見渡せる高台に着くと、彼はやっと私の手を離した。
「間に合った」
私達の目の先には……水平線にゆっくりゆっくり沈んでいく太陽。
海面をオレンジ色に染め、幻想的な雰囲気を醸し出している。