溺愛ドクターは恋情を止められない
『甘えればいい』と言われたものの、本当にいいのだろうか。
「行くぞ」
「ど、どこに行くんですか?」
「あ、俺の家」
『俺の家』と聞こえた気がするんだけど……。
唖然として固まる私に「なにしてる」と彼が声をかける。
「大丈夫。弱ってる女に、手、出すほどひどい男じゃないし。多分」
『多分』って……。
「お前のこと、ほっとけないんだ」
さやかちゃんの死を知ったとき、抱きしめられた温もりが蘇る。
「先生、あの……」
「いいから、乗れ」
ほんの少しだけ微笑んだ先生は、再び助手席のドアを開けてくれた。
桜は、もうすでに散り始めている。
道の両側にたくさんの桜が植えられている“桜のトンネル”は、あまりに幻想的で、目を奪われた。