溺愛ドクターは恋情を止められない
一旦覚悟が決まると、迷うことはなかった。
背中を押してくれた小谷先生のためにも、踏ん張りたい。
裏玄関に走ると、すぐに小谷先生の車が滑り込んできた。
「お願いします」
「おぉ」
まさか、フッてしまった人に、こんなに協力してもらえるとは思ってもいなかった。
「しかし、ムカつくな」
「なにが、ですか?」
ハンドルを握り前を見据えたままの彼は、言葉とは裏腹に口元を緩める。
「高原だよ。アイツは、知識も技術もどう頑張っても追いつけないし、松浦をこんなに夢中にさせる」
小谷先生の言葉に恥ずかしくてうつむくと、「しょうがないから応援してやる」とつぶやく。
「ごめんなさい」
「後から後悔するなよ。あぁ、やっぱり小谷先生にしておけばよかったって」
ケラケラ笑う彼は、さらにアクセルを踏み込んだ。