溺愛ドクターは恋情を止められない
「こんなことしたら、高原に叱られそうだな」
小谷先生は私の顔をチラッと見つめて、小さな溜息をついた。
「すみません」
「ま、他に方法思いつかないけど」
奏多さんの診療所行きを阻止できるのは、酒井先生しかいない。
小柴部長に頼んでも、父親という立場上、難しいだろう。
やがて五階に到着すると、エレベーターを降りた小谷先生は足を止めた。
「ここで見守ってやる。あとは松浦の仕事だ」
「はい」
ここまで連れてきてくれただけでもありがたい
それに、大切な奏多さんを守るのは、私の仕事。
角部屋まで行き、意を決してチャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
「もう、なんの用?」
相変わらず整ったきれいな顔。
そして、いつもは束ねている髪を下ろした先生は、美しい。
「えっ、どうして?」
私の登場に驚く彼女は目を見開いて、立ち尽くす。