溺愛ドクターは恋情を止められない
数日後。
朝出勤すると、すぐに一本の電話が鳴った。
「先生、消防から患者の受け入れ要請です」
スタッフルームにいた高原先生に声をかけると、すぐに電話を代わってくれて受け入れが決まった。
救急では、悲しいけれど助からない"命"も、数多くある。
私がここに来て、初めて人の死を目の当たりにしてから、もうすでに何回も悲しい経験を味わった。
内藤さんをはじめナース達は、いちいち動揺することもなく、ただ、淡々と業務をこなしていく。
それはドクターも同じだった。
あの人を、除いては――。
けたたましいサイレンがピタリと止むと、戦いが始まる。
「先生、助けてください!」
患者の奥様だろうか。
三十代くらいの女の人が、声を震わせながら高原先生にすがりつく。
「最善を尽くします」
「三十六歳男性。突然激しい頭痛を訴えた後、大量に嘔吐。そのあと意識混濁。救急隊到着時、脈拍呼吸、共に確認できず蘇生を続けましたが……」