溺愛ドクターは恋情を止められない
それからしばらく黙り込んでしまった彼は、酒井先生が持って来たという資料に目を落としながら、コーヒーを飲んでいた。
私がここに来た理由を探ろうとはしない。
「松浦といると、落ち着くんだ」
「えっ?」
資料から視線を外すことなく、ボソッとつぶやく。
「なんでだろうな。痛い場所が同じだからなのか……」
痛い場所……。
胸の奥の方に、モヤモヤ残る苦しい気持ち。
先生と違って、誰かの命を助けることなんてできないくせに、それでもなんとかしたいと思ってしまう気持ち。
それらすべてが見透かされているようで、ハッとした。
「来てくれて、うれしかったよ」
「えっ、あのっ……」
こんな風に押しかけたことを後悔していた私は、彼の口から飛び出した言葉に驚いていた。