【番外編追加♪】オ・ト・ナの、お仕事♪~甘いキスは蜜の味~【完結】


そのときには、祐一郎さんは実は美由紀のお父さんの隠し子で、美由紀とは半分血がつながった異母兄弟だって、祐一郎さん本人から聞いていた。

美由紀からは別口で、祐一郎さんと父さんとの関係がうまくいっていなくて、祐一郎さんがお母さんの旧姓の不動の姓を名乗っていることを美由紀から教えてもらっていた。

その情報を私なりに考えあわせた結果、たぶん、祐一郎さんは、ホテル経営をしているというお父さんを自分の力で超えたいのだろうと、そんなふうに感じた。

もちろん、そんなおこがましいことを口にはしなかったけど。

その辺はまだ、私が踏み入っていい領域じゃないと思う。

いつか、祐一郎さんの口から直接お父さんのことについて聞けることがあれば、そのときに改めて考えようと思っている。

――そういえば、ここ一か月美由紀にあってないなぁ。

バイトが忙しくてなかなか大学に行けないって、行っても時間が合わなくて会えないんだと、ラインで言ってたけど。

ノアールでのお茶もご無沙汰だし、今度さそってみようかなぁ。

ああ、美由紀と女子会したい。

売り上げ表の金額を見ながらそんなことをつらつらと考えていたら、ルームメイクの人たちがゾロゾロと事務所に入ってきた。

「あ、お疲れさまでした!」

「茉莉ちゃん、疲れたよ……」

いちばん初めに入ってきた高瀬ママが、心底疲れたように肩を落としてタイムカードを押せば、今井さん、山田さん、アルバイトの白井君たち男性陣も同じようにお疲れモードでタイムカートを押していく。

いつもは、仕事後はみんな妙に元気になるのに。

「みなさん、お疲れみたいですね。何かあったんですか?」

私が問えば、高瀬ママは「う~ん。なんか、ゾクゾクするんだよね」と、眉間にしわを寄せて自分の額に手を当てた。


< 366 / 439 >

この作品をシェア

pagetop