戦慄のクオリア
空から投射された可能性の一つとして考えていた。面倒だから当たってほしくはなかったが、そういう勘はよく当たる。ruinは宇宙からラスール帝国に向けて投射されたのだ。
ラ・モールは宇宙に行くことも想定内で設計されている。宇宙を出る前に燃え尽きる。と、いうことはないようだ。其の前に・・・・。
天空を舞う黒き死神を撃ち落そうと戦闘機がラ・モールに群がってくる。敵の戦闘機からラ・モールを守ろうとラスール帝国のマークをつけた戦闘機も後を追ってきた。
ラ・モールは戦闘機と違って重量があり、小回りがきかない。機動性は見かけよりもあるが戦闘機には敵わない。ラ・モールを守ろうとしてくれるのは有難いが、ろくな練習もなしに駆り出されたので戦闘機とミサイルを避けながら上昇するのはスカーレットには難しかった。
「くそっ」
何度か爆撃を食らい、機体が大きく揺れる。コックピットには体を固定する物がないので、其の度にスカーレットは体を何処かに打ち付けた。命に関わるような怪我は負っていないが、其れでも打ち付けやところがかなり痛い。
 ラ・モールで攻撃をして、露払いをしたいところだが、下手に攻撃をすると味方も巻き添えにしかねない。此処は宇宙に出ることに専念して、攻撃は戦闘機に任せた方がいいと判断して、スカーレットは更にスピードを上げた。
 ラ・モールの行く手を阻むように眼前に現れた戦闘機を別の戦闘機が銃撃をした。其れによってわずかにできた隙をつき、スカーレットは天空を裂いて、誰の手も届かない場所まで上昇していった。
 戦闘機に乗っていたエヴァネンスは其れを確認し、眼前の敵を倒すことに専念した。敵の味方の戦闘機はミサイルを浴び、炎を出して落ちていく。
落ちた戦闘機に誰が乗っていたとか、敵、味方、どっちの方が多く天空に残っているのか分からなかった。みんな、自分が生き残ることに必死で、戦況なんて誰の目にも入ってはいなかった。
 エヴァネンスの目にも当然入ってはいない。彼はスイッチを押し、眼前に現れた戦闘機を攻撃する。エヴァネンスの横から現れた敵の銃弾が飛んでくる。エヴァネンスは其れをギリギリで避け、再びスイッチを押す。エヴァネンスが放った弾は敵に命中。敵は真っ逆様に落ちて行った。敵の戦闘機は少しずつ、灰となって消えていく。


 何の装飾もない灰色の建物。此処はイカルガ王国軍の収容所。
戦争に負けたイカルガ王国の軍人はラスール帝国では奴隷のように扱われていた。そんな彼らを解放しようとリベレイションが収容所に押し寄せてきた。
 リベレイションを食い止めようと、ラスール帝国軍も収容所に集結し、銃撃が始まっていた。
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