黒の魔法師
入学試験

[1]

その事件から十年後。
ニュースにはなったが元々秘密利にされていた事だった為、既に大多数の国民からその一族の名は忘れ去られていた。

「528番、黒影勇」
その声に一人の生徒が立ち上がり、教室の中へ入った。
中には異様に広い部屋にも関わらず、隅で5人の教師が長机を挟み此方を向いて座っていた。
「宜しくお願いします」
頭を下げ生徒は椅子に座った。
「あっれぇ~?」
生徒から見て右から二番目の見た目が教師には到底見えない、全身カラフルな教師がすっとんきょうな声をあげて机の上の資料を漁り始めた。
「先程の資料の性別の箇所を確認した方が良いと思いますよ」
左から二番目にいる女教師が呆れごえで告げた。
言われた通りに確認した教師は驚き顔で目の前の生徒を見た。
「…女の子だった」
資料の名前の欄と生徒を見比べながらその教師は呟いた。
その態度に真ん中に居た男教師が咳払いをしながら右側を睨んだ。
「…すんません」
不服気味にカラフルな教師は言葉だけの謝罪を述べた。
その後質疑応答が繰り返された。
「志望動機は?」
何処の学校にも有りがちな質問。
「自分の特技を生かしたいと思い…」
だが、
「特技…ねぇ」
生徒の言葉は真ん中の男教師によって阻まれた。
「話は最後まで聞きましょー」
右から二番目のカラフルな教師が口を挟む。
「しかしねぇ、この生徒の魔法力は百と少し。百二十が合格ラインと言われているのに…」
「ですが百以上有れば受験資格は有りますよ」
男教師の言葉に左から二番目の女教師が口を挟んだ。
「私が言っているのはですね、合格ラインにも達していないのにも関わらず特技と称している点ですよ」
男教師は女教師の言葉に答える様に言った。
日本人の魔法力の平均値は五十以下という結果が正式に出ている。
「それにこの学校関連の受験を受ければ通常の受験、就職に有利と言われています」
世間では受験資格百以上の魔法関連学校の受験を受けることが出来たというだけでステータスになる。
「魔法力自体は基本にほぼ全ての人間誰もが有しているもの。そのせいか毎年それ目当ての受験生が絶えずに我々も迷惑しているんですよ」
そして続けて生徒を白けた目で見ながら告げた言葉は、生徒に諦めろと遠回しに告げているものだった。
「毎年大変な思いをされているようですね。ですがワタシにそう愚痴を溢されても困ります」
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