空色canvas
この前まで俺の一番近くに居た愛しい人が今、目の前に居る。
一ヶ月で何かが変わるわけもなくて菜央はあの頃と同じだ。
赤みがかった綺麗なブラウン色の髪が胸あたりまで真っ直ぐ伸びている。
大きな黒い瞳とすっと通った鼻筋、薄い唇…。
菜央はやっぱり綺麗だった。
学園内でも一際目立つその容姿に振り向かない奴はいないんじゃないのかとさえ思う。
自慢の彼女だった。
だけどそんな菜央も今は俺のものじゃなくて、赤の他人だ。
久しぶりに見る菜央の姿に目が離せないでいると、圭介が急に席を立った。
「俺…次、授業入ってっからそろそろ行くわ」
そう言うとテーブルに広げていたノートや資料をかき集め、足早にその場を後にした。