こんな私、私じゃない。でも私・・・
山崎さんは相手が海外に転勤になるから着いていくとのこと。辞めることを人事課の私が知らないのは管理部の部長に社長室の片岡室長が内々でどうにかならないか頼んできたらしい。外部に求人を出すのではなく社内で異動させる方法。で、秘書検定を持っている緒方さんと私の名前が挙がった。

「いやいや、持ってはいるけど2級だし秘書としての経験も全くないし無理」

秘書なんて秘書になりたいと思って取ったわけじゃない。

「社長室には緒方さんが行くことになる。で、美沙は緒方さんの代わりに経理に異動する」

衝撃的なことをすぐるに言われた。

えっ!?

なにそれ・・・

「美沙って簿記持ってるんだって?」

「商業科だったから・・・でもほとんど経理の仕事はしてない」

前の会社で一時期経理の仕事をしていたけど、それだけ。

「大丈夫だよ。基本がわかってるしそれにビジネス会計も持ってるんだろう? ・・・緒方さんが社内にはいるし内線でも他の人にでも聞ける」

経理の仕事がしたくて簿記もビジネス会計も勉強したけど・・・

「ちょっと待って。それって断れるの?」

本人の意思を確認してくれるよね?

「無理だよ。もう決定」

「なんですぐるは知ってるの?」

「昨日遅かったのはその話し合いをしてたから」

すぐると待ち合わせをしたのは日付の変わる寸前だった。
< 110 / 214 >

この作品をシェア

pagetop