(気まぐれっぽい)Queen
美咲side

お日様のような あたしには相応しくない表情をしている葵。

「あらあら、年相応な顔しちゃって…」

いいなぁ…。

!!!? …今、あたしは何を考えた…?
年相応な葵を、羨ましいなんて…。

ちょっと…、冷静にならなきゃ。いつも通りにならなきゃ。

「ちょっと…、お手洗い行ってくるわね」

「おう!!ありがとな、ミサ!」

あぁ…心が痛い。何故だろう?何故、心が痛いのだろう…?

気が付けば、トイレの前まで来ていて。あたしは無我夢中で走っていたんだ…。

悔しい…。悔し過ぎる。己の弱さが、葵を羨ましく思った心の弱さが…

「悔しいっ…」

「何…言ってんの…?」

不意に声が聞こえ、後ろに振り返る。
キャラメル色の髪が見え…。

「えっと…西園寺くん、だっけ」

「そうだけど…。あんた、今 悔しいって言ったよね。その意味、聞かせてよ」

堂々とした態度で聞いてくる西園寺くん。人に聞く態度ではないような気がする。それが可笑しくって、クスリと笑みがこぼれる。

「何笑ってんの。キモい」と、西園寺くんが言う。顔を見るだけで思い出してしまい、また笑ってしまう。

「フフッ あら、ごめんなさいね。つい、可笑しくって笑ってしまったわ」

「ふーん。まあ、いいけど。早く俺の質問に答えてよ」

うーん。どう答えようか…。きっと西園寺くんは、あたしが萌花に嫉妬したと思っているのだろう。

「あたしの…、自分の不甲斐なさに悔しいと思っているの」

「ふーん。アンタも馬鹿らしいことで悩むんだな」

西園寺くんの発言にびっくり。この子、物事をハッキリ言っている。態度だけじゃなく、言葉も堂々としているのね。けど、聞き捨てならない言葉…。

「馬鹿らしいこと…?」

「そう。何が自分の不甲斐なさだよって思う。自分のこと、自信持てよ。アンタ、顔ちょっと良いんだし…」

自信を持つ…?あぁ、そうね。あたしは、自分に自信がないのね。


「ありがとう…、亜希くん。また会いましょうね」

「アンタ…。今の表情、すっげぇ輝いてる。綺麗というか…素敵だ。…じゃあな」

「〜ッ!!急すぎるわよ。…… 今度は!!あたしのこと、名前で呼んで」

「…気が向いたらな」と亜希くんは言って、去っていった。


“綺麗というか…素敵だ”

「不意打ちすぎるわよ」


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