あの日の雪を溶かすように
男は黙ってプレゼントをスッとポケットに戻すと、
見舞いに持ってきたメロンを台に置いて、
かるく一礼をすると、
「もしまた何かあったら、遠慮せずに言ってくれ。」
と言い残し、病院を後にした。


それから少し経って、先に葵が口を開いた。
「…今のって、ちょっとなくないすか?」

「…うん。ないかも。」
アリスが少し遅れて答える。
アリス自身も戸惑っていることが、葵には良くわかった。

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