その手には…
月明かりに照らされて
 太陽が沈んだ空には薄い雲が広がっている。月明かりに照らされた小道を青年が
急ぎ足で歩いていた。辺りには土を踏みしめる音だけが響いている。青年は時折
立ち止まり、乱れた呼吸を整える。
その手には白いパーカ。

「あいつ、こんな道歩けたのか」

呟いた独り言は空気に溶けて消える。
終わりがないと思われた小道の先にうっすらと光が見え始めた。
青年が歩く速度を上げる。
光に近づくにつれ速度は上がり
最後には走っていた。

「っ‼」

小道を抜けるとそこには、夜の光を反射して煌めく泉があり1人の少女が
こちらに背を向け佇んでいた。
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