30分の待ち時間







海先輩を好きになったのは、放課後。



元々サッカー部は有名で、名前だけは知っていた。

山田太郎って名前が似合いそうなほど平凡な顔立ちをしている海先輩は、あんまり有名じゃなかったけど。

サッカー部はやけにイケメン揃いだったから、海先輩は埋もれていた。




葉月は図書委員で、その日は図書委員の仕事があるからって、いつも一緒に帰宅するあたしは1人で校門までの道を歩いていた。

そこであたしは、海先輩に声をかけられたのだ。




『これ…キミの?』



渡されたのは、葉月とお揃いで買った、ケイタイストラップ。

ハートのチャームが揺れる、可愛いもので、あたしのお気に入りだった。



『そうです!
ありがとうございます』


『どういたしまして。
これからは気を付けてね』



その時向けてくれた笑顔に、あたしは今まで感じたことのない気持ちを感じた。

信じられなかったけど、それが恋だと知った日からは、自然と海先輩を意識するようになっていた。

地味で目立たない雰囲気の海先輩を好きだと言う女子は、見たことがない。

だからライバルもいなくて、安心していたのに。




まさか。

まさか…学年1可愛い葉月が、海先輩を好きになるなんて。




「鈴?」

「あ、何でもないよ。
そういえばお昼食べよう!
お腹ペコペコだよ!」





言えない。

あたしも海先輩が好きなんて。




敵いっこないもの、葉月になんて。








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