30分の待ち時間








「スズなら、ちゃんとその葉月って子に、自分の気持ち言えるよ!
俺が見ていなくても、スズなら大丈夫!

俺が保証してやるよ!」





太一……。




「何だか凄く安心できないな、その保証ってやつ」


「はっ!?」


「まぁー良いや!
太一も頑張っていたし、あたしも頑張る!

太一が見ていなくても、絶対にあたしは葉月に言うんだ!
葉月はあたしの大事な、幼馴染で親友だから!」


「その意気だ、スズ!」




あたしたちは信号待ちをしながら笑う。




そして、現実に気が付く。






太一とは、不思議な出会いだった。


普段電車内で寝たりなんてしないのに、今日は寝てしまって。

気が付いたら次の電車が30分後に来る、田舎の駅に来ていて。

溜息をついたら、「幸せ逃げるよ」って太一に話しかけられて。

一緒に30分を潰すことになって。

テストの点数とかでたまに言い合って。

みかんが食べ物の中で1番好きだって共通点見つけて。

海に入った太一が投げた帽子を、あたしが濡れた手で掴んでしまって。

座った砂浜で、お互い失恋したんだと気がついて。

そして今、こうして隣同士で笑い合いながら歩いている。






だけどそれは、もう終わり。







< 52 / 69 >

この作品をシェア

pagetop