30分の待ち時間
「スズなら、ちゃんとその葉月って子に、自分の気持ち言えるよ!
俺が見ていなくても、スズなら大丈夫!
俺が保証してやるよ!」
太一……。
「何だか凄く安心できないな、その保証ってやつ」
「はっ!?」
「まぁー良いや!
太一も頑張っていたし、あたしも頑張る!
太一が見ていなくても、絶対にあたしは葉月に言うんだ!
葉月はあたしの大事な、幼馴染で親友だから!」
「その意気だ、スズ!」
あたしたちは信号待ちをしながら笑う。
そして、現実に気が付く。
太一とは、不思議な出会いだった。
普段電車内で寝たりなんてしないのに、今日は寝てしまって。
気が付いたら次の電車が30分後に来る、田舎の駅に来ていて。
溜息をついたら、「幸せ逃げるよ」って太一に話しかけられて。
一緒に30分を潰すことになって。
テストの点数とかでたまに言い合って。
みかんが食べ物の中で1番好きだって共通点見つけて。
海に入った太一が投げた帽子を、あたしが濡れた手で掴んでしまって。
座った砂浜で、お互い失恋したんだと気がついて。
そして今、こうして隣同士で笑い合いながら歩いている。
だけどそれは、もう終わり。