好きで、言えなくて。でも、好きで。
総ては愛の仕業
「何なんだ、何回もかけてきて。つか、一体どこから番号を……」



威叉奈は人気のない非常階段のある通路で、会議前にかかってきた番号へリダイアルしていた。


苛ついた声を隠すこともなく、ただ警視庁内なので怒鳴りたいのは抑えて。



何度もかかってきていた知らない番号。

しかし今回は、留守電が入っていた為、相手は分かっている。


分かっているからこそ、威叉奈はかけるしかなかった。



「あ?話だと?俺にはねぇよ。もう俺は警察の人間なんだ。お前らとは縁を切ったんだ。あん時、そう言っただろうが。」



縁を切ったぐらいでは、無かったことになんてならないが。


それでも威叉奈は、賭狗膳と苗込に救われたから。


それに見合うだけの、未来の価値を作ろうと思った。



愛されたい人に愛されなくても。



せめて、賭狗膳と苗込のそばに。


自分は2人の子供なんだから。



「お前と話すことなんてねぇ。二度とかけてくるな。」



拒絶の言葉を吐き捨て、無理矢理会話を終わらせる。


ボタンを無意味に強めに押して、通話を切った。
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